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カテゴリ:巨匠の傑作 > クラナッハ

 2013年3月3月にウフィツィ美術館(フィレンツェ)を訪問しました。今回は、ルーカス・クラナハ 父作「アダムとイヴ」を紹介します。
 ルーカス・クラナハ 父(1472~1553年)はルネサンス期のドイツ人画家です。 
 ルーカス・クラナハ 父はビッテンベルクに工房を構え、ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用絵師だったと伝わります。マルティン・ルターと友人関係だったようです。ルーカス・クラナハ 子も画風が似ていますが、子の生年(1515年)から考えて1530年代前半までの作品は父親の作品と思われます。それ以降の作品の判定は難しいと思います。子の方が写実的で発色が良く、父親の方が観念的・装飾的な画風に感じます。
 この「アダムとイヴ」は1688年時点で、トスカーナ大公国コレクションに記され、18世紀初頭にはウフィツィ美術館の所蔵となったようです。当初デューラー貴族と判定されたようですが、1784年にはルーカス・クラナハ作と修正されました。
 1507年デューラー作の「アダムとイヴ」の噂をウィーン滞在中に聞き、1510年には「アダムとイヴ」制作に挑戦したようです。ワルシャワ国立美術館所蔵品がそれだとされています。本作品はルーカス・クラナハ 父が50歳代の習熟した時のものです。イヴは右手に知恵の実(リンゴ)を持ち、枝からは蛇が見ています。アダムは右手で頭を掻き、悩んでいるようです。デューラーの作品より、アダムとイヴの感情のようなものを感じます。デッサン力はヤッパリデューラーの方が上です。
アダムとイヴ(ルーカス・クラナハ 父、1528年作)

アダムとイヴ(アルブレヒト・デューラー、1507年作、プラド美術館蔵)

アダムとイヴ(ルーカス・クラナハ、1510年作、ワルシャワ国立美術館蔵)



 2019年7月にフランス北東部にあるリール美術館に行きました。今回は、ルーカス・クラナハ工房作「キリストの嘲笑」を紹介します。
 ルーカス・クラナハ 父(1472~1553年)はルネサンス期のドイツ人画家です。ルーカス・クラナハ 父はビッテンベルクに工房を構え、ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用絵師だったと伝わります。マルティン・ルターと友人関係だったようです。ルーカス・クラナハ 子も画風が似ていますが、子の生年(1515年)から考えて1540年頃までの作品は父親・工房の作品と思われます。それ以降の作品の判定は難しいと思います。子の方が写実的で、父親の方が観念的・装飾的な画風に感じます。膨大な数の作品を残しています。
 「キリストの嘲笑」の前景には、「ユダヤの王だ。」と言ったキリストが王の衣装を着けられて嘲笑われています。奥の部屋ではその後に起きたキリストのむち打ちが描かれています。左奥の赤い衣装の老人が、キリストに死刑の宣告をしたローマからの総督ポンテオ・ピラトと思われます。きちっと描かれた作品で、相当の労力が掛かったと思われます。工房の作と思われます。人物の容貌にルーカス・クラナッハの傾向が良く出ているので、少なくとも顔・頭部は本人の筆が入っていると思われます。かなり出来が良くて、ルーカス・クラナハ父の作品と言っても良いレベルだと思います。リール美術館の公式HPには、「弟子の作品」と謙遜して記されています。
キリストの嘲笑(ルーカス・クラナハ父工房、1540年頃作)
キリストの逮捕 クラナハ

 2016年6月にウンターリンデン美術館(コルマール)を訪問しました。今回は、ルーカス・クラナハ父作「メランコリア」を紹介します。
 ルーカス・クラナハ父(1472~1553年)はドイツのヴィッテンベルクに工房を構え、ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用画家として多くの作品を残しました。
 アルブレヒト・デューラー作版画「メランコリアⅠ」に触発され、ルーカス・クラナハ父は1532年に4作品の「メランコリア」を描いたと伝わります。この作品とコペンハーゲン国立美術館所蔵品が現存しています。ウンターリンデン美術館所蔵品はルーカス・クラナハ父としては柔和な容貌で、発色も良い感じです。長男が一部描いたと推定されています。右端の女性が、メランコリーの偶像です。左上の雲の中に不安が描かれていると思われます。小さな子供たちが、無邪気に遊んでいます。
メランコリー(ルーカス・クラナッハ父、1532年作)
ルーカス・クラナハ作メランコリー 
メランコリア(ルーカス・クラナハ父、1532年作、コペンハーゲン国立美術館蔵)

メランコリアⅠ(アルブレヒト・デューラー、1514年作)

 2016年6月 オスカー・ラインハルト・コレクション(チューリッヒ郊外)を訪問しました。チューリッヒ中央駅から電車に20分程でヴィンター・トール駅に着き、徒歩20~30分程でオスカー・ラインハルト・コレクションに到着しました。住宅街のなかの個人邸宅という感じで、小さな看板が無ければ門の中に入るのも躊躇われる雰囲気でした。今回はルーカス・クラナッハ作「クスパニアン夫妻の肖像」を紹介します。
 ルーカス・クラナッハ(1472~1553年)はドイツ東部のヴィッテンベルクに工房を構えて、ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用絵師となったドイツ人画家です。マルティン・ルターの友人であった事が知られています。マルティン・ルターやその家族の肖像を多く描いています。工房を構えて膨大な依頼に答えたようで、多くの現存作品があります。作品は玉石混合です。
 ヨハネス・クスパニアン(1473~1529年)はウィーン大学薬学部教授も務めた文化人です。夫妻の肖像画を依頼され描いたと思われます。詳細な描き込みが見られます。玉石混合の「玉」だと思います。         
クスパニアン夫妻の肖像(ルーカス・クラナッハ、1502年作)
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ヨハネス・クスパニアン博士の肖像(ルーカス・クラナッハ、1502年作)
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アンナ・クスパニアンの肖像(ルーカス・クラナッハ、1502年作)
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 アルテマイスター(ドレスデン)を訪れて感じた最大の驚きは、ルーカス・クラナッハの大作・名作が一杯展示されていたことです。ルーカス・クラナッハ作品の紹介文献にもあまり載っていない大作がありました。コレクションの他作品の確かさ、画家の技量の確かさ、絵の具の品質等々を考えて、贋作が展示されているとも思えませんでした。当時はまだ画家が絵の具を造ったり、その弟子が造ったりしていました。顔料や溶き油の品質も大事で、悪いとひび割れや剥離が早々に起きてしまいます。発色と頑丈さから、相当レベルの高品質絵の具と思われました。旧東ドイツ(社会主義圏)ということで、これらの存在の紹介が遅れたのでしょうか? 
 クラナハは元来写実的な(印影が感じられる)描き方だったのですが、1520年代半ばから平面的や定型的(デザイン的)な作品が見られるようになりました。描かれた人物が夫々個性を持っていたのが、似たような要望の人物画が現れたのです。
 お決まりの「アダムとエヴァ」や「聖カトリーヌ」、「聖バルボア」などの間で、二連の肖像画「ハインリッヒ・デル・フロンメル公爵夫妻(ルーカス・クラナハ作)」に目を奪われました。その荘厳さと豪華な絵の具にビックリしました。
ハインリッヒ・デル・フロンメル公爵夫妻(ルーカス・クラナハ作)
公爵夫妻 クラナハ
 上の写真はインターネットから入手しましたが、実際の絵の具と発色と豪華さは特別の物でした。16世紀初頭の絵の具としては、最高の部類です。私が訪問時に撮影した写真は照明の反射の映り込みと薄暗いためのピンボケですが、色・英の具の感じは良く出ているので紹介します。
公爵夫妻の前で
DSCN3467kai
クラナハの作品の間では、最高レベルの絵でした。16世紀初頭の肖像画としても、最高レベルの豪華さと描写だと思います。

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