世界美術館巡り旅

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カテゴリ: 世界絵画最高傑作

世界絵画最高傑作に、レオナルド・ダ・ヴィンチ作品からもうひとつ選ぼうと思いました。私の評価方法では大きさ(没入感)が重要で、「受胎告知」とこの作品のどちらにしようか迷った結果、10年程後に描かれている本作品を選びました。ロンドン・ナショナルギャラリー版を選ばなかった理由は、訴求性のところで説明します。
先ずは公表サイトから作品のコピーを紹介します。
私の評価法での推薦理由を紹介します。
(1)画力・技量 
    これだけの大きさにこれだけの内容を書き込んだ技量は素晴らしいです。
   「受胎告知」より10年経ち更に画力が上がって、聖なる雰囲気を醸し出し
   ています。満点です。
(2)大きさ
    1m強x2mで没入感を得る為にはかなり近づく必要がありますが、
   近づいても十分見ごたえのある描き込みです。満点としました。
(3)美しさ
    美しいことへの異論は無いと信じます。満点。
(4)訴求性(斬新性)
    この絵は「無原罪の御宿り信心会」からダヴィンチ達が受注して制作
   したもののようです。ダ・ヴィンチの解釈も含めて本作品を描き上げたの
   ですが、引き取りの対価と修正で揉めたようです。注文通りに描き直して
   納品したのが、ロンドン・ナショナルギャラリー版のようです。最初に描
   いた本作品は、仲裁してくれたパトロン貴族に贈呈したようです。それが
   ルーヴル美術館所蔵となったと考えられます。
    発注主の修正要求の記録は残っていないようですが、二つの絵を比較する
   と次のようなものと推定出来ます。
  ◆ 従来通り、聖人の頭の上にリングを描け。
  ◆ 洞窟の中であることを強調しろ(画面を暗くしろ)。
  ◆ 右側の天使が赤ん坊(キリスト)を指さすのは不遜なので止めろ。
   発注主(教会)の意向に逆らって本作品を描いて残したことには訴求性
(斬新性)が十分あると考えました。満点です。
 ルーヴル美術館内ではレオナルドダヴィンチ作品を並べて展示している壁面があり、その間に飾られています。ロンドン ナショナル・ギャラリーの作品も参考の為紹介します。
Leonardo da Vinci Virgin of the Rocks (National Gallery London).jpg
 ルーヴル美術館版と比較すると、「聖人の頭上にリング」、「天使がキリストを指さしていない」、「画面が洞窟内らしく薄暗く書かれている」という修正が確認できます。それ以外に描き直された箇所があるかは確認した事がありません。興味が御有りの方は、比較されたらどうでしょうか?

世界最高傑作のひとつの「最後の晩餐(レオナルド・ダ・ヴィンチ)」を紹介します。公開ページから、作品のコピーを紹介します。

最後の晩餐 (レオナルド) - Wikipedia
最高傑作への推薦理由を、私の評価方法で紹介します。
(1)画力・技量
   これだけ大きな画面で、破綻や不自然さが全く感じられません。人物一人
  ひとりの描き分け・描写も素晴らしい。満点だと思います。
(2)大きさ
   十分大きくて、没入感も十分得られます。大きいのでかなり後ろに下がって
  見ないと、全体が見渡せないくらいです。満点です。
(3)美しさ
   かなり剥げたり・色褪せたりしていますが、今でも十分美しい。却って、
  荘厳さを醸し出している。満点です。
(4)訴求性(斬新性)
  ◆ 初めて大胆な「一点集中遠近法」を使って画面を構成してあります。
    ざっと調べたところ、「楽園追放」で有名なマザッチオが1426年頃に
    「聖三位一体」という絵で一点集中遠近法を既に使っています。
    「最後の晩餐」は1495~97年頃に描かれたようです。横長の全面
    を「一点集中遠近法」で構成したことが、猛烈に斬新だったと思われます。
    この絵を初めて見た人達はびっくりして、「神が降りて来た」と感じたと
    思います。
  ◆ 壁画を油絵(テンペラ画)で初めて描いた。それまでは、「フレスコ画」
    の手法で描かれていました。フレスコ画では、壁に漆喰を塗り生乾きの
    表面に水で溶いた顔料で絵を描いた。漆喰の微細な隙間に顔料が浸み込ん
    で定着した。見た目には、水彩画に近い感じとなります。ダ・ヴィンチは
    油絵で描いたので、出来上がった時には随分と鮮やかだったと思わる。
    僅か1~2年でひび割れや剥離が始まったとの話が残っているようです。
この2点だけでも、十分に斬新だと思われます。人物の動作からいろいろな推定や
邪推がされているよですが、今回はその件には触れません。訴求性は満点です。
  この「最後の晩餐」は、イタリア ミラノ市 サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に所蔵されています。
            サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会前景
DSCN0248
 この写真の左側に展示建物(旧来修道院)があり、食堂跡の壁に描かれています。参観するためには事前にインターネットで予約する必要があります。朝8:20から20分刻みで予約が出来ます。各時間帯で25人の編成です。インターネットで予約したらE-ticketをプリントして持って行きます。
 私は朝8:20に予約して、8時前から入り口に並びました。時間になったら入り口扉が上下に開いて、中に入れました。E-ticketを見せると待合室に通されました。
 参観時間になると二重トビラの手前側が開いて待機通路に全員入ると、その扉が閉まりました。暫く空気の入れ替えがあって、やがて展示の部屋(旧食堂)に通されました。劣化を防ぐために、湿度管理に気を使っているようです。壁画から1.5m程度まで近づけました。そのまま後ろに下がってほぼ全画面が見られると、突然(一点消失)遠近法の効果が現れました。突然遠近感が強く現れました。遠近法が良く知られていなかった16世紀初頭の庶民は、びっくりしたと思われます。一点消失遠近法を部分的に理解・使用した画家は居ましたが、ここまで体系的に(キリストの額一点から糸で線を引いた)遠近法を使った最初の絵画だと思われます。

 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 1889年作の「ムーラン・ルージュにて(シカゴ美術研究所所蔵)」を世界絵画最高傑作に推薦します。ロートレックは世紀末芸術を代表する画家のひとりです。彼は南仏の貴族の息子として生まれ、若くして両親が離婚して、母親とパリに移り住みました。ロートレックの画才に気が付いた母親が父親の知り合いであった画家に師事させました。遺伝的障害か若い頃に両足を骨折して、両脚が短い体形で身長約1.5メートルでした。お金の心配はなく、毎夜パリを徘徊しました。時は世紀末、彼自身も貴族の末裔で、世紀末の権化みたいな人物でした。
ムーラン・ルージュにて(1889年 ロートレック作)
イメージ 1
 評価方法に従い、推薦理由を説明します。
(1)画力
   デッサン力に裏付けされた、独特の描写です。下手上手のようで、的確な
  描写です。
(2)大きさ
   1.2mx1.4mの大きさですが、ロートレック作品の間では最大クラス
  です。近づけば、十分な没入感があります。
(3)美しさ
   享楽的で退廃的な美しさです。酔っぱらった美しさです。青っぽい画面が、
  独特の美しさを醸し出しています。
(4)訴求性(斬新性)
  斬新な構図;左下テーブルの三角形、右下の黒っぽい人物の三角形、その谷間
   に友人たちが談笑する斬新な構図です。安定しているような、不安定なような
   感覚に陥ります。酔っぱらってますかネ。
  白色のバランス;左下の白いテーブルと右端の顔、談笑しているこちら向きの
   女性の顔と右奥の女性の背中と顔が、夫々バランスしています。鑑賞者の
   眼も引き付けます。
  世紀末の雰囲気;享楽的、退廃的な雰囲気を作っています。

  世紀末を代表する最高傑作絵画と思います。

 ケルビン・グローブ美術館所蔵のサルバトール・ダリ作「十字架の聖ヨハネのキリスト」を、世界絵画最高傑作に推薦します。ダリがシューリアリズムの絵画で名声を得て、ふと立ち止まってキリストに関する絵を3枚描いたそうです。
 この作品をグラスゴー市が買い上げ、現在はケルビン・グローブ美術館に展示されています。購入当時は税金の無駄使いたと、大騒ぎになったようです。現在では、グラスゴー市の貴重な宝となりました。
十字架の聖ヨハネのキリスト(サルバトール・ダリ作)
image[2]
評価法に従い、推薦理由を紹介します。
1.技量(画力)
    ダリのシューレアリズム絵画は細密画です。現物を見ると予想以上の
   小ささに困惑します。この絵は大作です。大作を描いても、ダリの技量
   に揺るぎがありません。素晴らしいデッサン力です。
2.大きさ
    十分な大きさです。ダリの細密描写で、実物以上の大きさも感じます。
3.美しさ
    妙な美しさです。堪らなく静かです。
4.訴求性(斬新性)
    キリストの架刑を上から描いた絵は他にありません。独創的で美しい。
   宗教に詳しくないので良く分かりませんが、とにかく荘厳です。
   前例のない種類の傑作だと思います。

 フィリッポ・リッピ(フィレンツェ派)作の「受胎告知(サン・ロレンツォ聖堂所蔵)」を世界絵画最高傑作に推薦します。
 フィリッポ・リッピはフィレンツェの肉屋の息子として生まれ、間もなく孤児となりました。修道士として画家となる指導を受けました。マザッチョの影響を受け、ゴシックからルネッサンス絵画へのつなぎ役をアンジェリコ(10歳ほど年上)とともに務めました。ボッティチェリが弟子になったようです。リッピは修道士として問題児で、スキャンダルが多かったようです。特に修道女と駆け落ちして、自宅に戻ってしまったスキャンダルは大騒ぎになったようです。作品を紹介します。
受胎告知(フィリッポ・リッピ作)
イメージ 1
 評価法に従い、推薦理由を紹介します。
1.技量(画力)
  陰影と遠近法で見事に描き上げています。手前のガラス製フラスコも見事に
  描き上げています。
2.大きさ
  祭壇画なので十分な大きさです。
3.美しさ
  精緻な美しさを持っています。
4.斬新性
  聖母マリアは赤と青の衣服を着るのが定番でした。それを破っています。
  聖ミカエルの翼も力強く、ダヴィンチの受胎告知に繋がりそうです。
  手前のフラスコは受胎告知に初めて登場しました。現実との境(結界)を
  示しているとの説があるようです。
 平面的なゴシック描写から写実的に大きく変わっています。ボッティチェリやダヴィンチにも影響を与えたように感じます。時代のさきがけとなった傑作です。

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