2017年6月アントワープ王立美術館(アントワープ/ベルギー)に行きました。今回は、ジェームズ・アンソール作「陰謀について」を紹介します。
 ジェームズ・アンソール(1860~1949年)はベルギー北部オーステンドで生まれ、1877年からブリュッセルの王立美術アカデミーに学び、1880年に帰郷しました。その後も故郷の実家の屋根裏部屋で絵を描き続けました。仮面を被った人々や骸骨が多く登場する独特の絵を描きました。
 印象派風画風作品「牡蠣を食べる女性」は1882年のアントワープのサロンで、翌年のレッソール(ブリュッセル芸術家協会)でも出品拒否をされました。それを切っ掛けに、アンソールとその仲間が反レッソールの「レ・XX(20人会)」を結成しました。画風・画題も大きく替わろうとしました。
 1888年制作の「1889年のキリストのブリュッセル入城」で、アンソールは弾けてしまったようです。画面中央に画家自身に似たキリストが鑑賞者の方に向かっています。マルキ・ド・サドや政治家、家族に似た人物たち・群衆が、こちらに押し寄せてきます。上部には、「社会万歳」の垂れ幕が描かれています。どう考えても、「翌年にアンソールを支持する人々とレ・XX(20人会)が、ブリュッセルに押し掛ける」との予告です。ブリュッセル芸術協会とレッソールへの反逆を予告しています。流石に、レ・XXもこの作品の展示を拒否しました。「1889年のキリストのブリュッセル入城」はアンソールの生前に公開されませんでした。
 2年後に描かれた「陰謀について」は事件を反省して、私小説的・個人的な画題に戻った筈です。ベルリンの中国美術商の結婚式スキャンダルが画題だという説もあるようですが、違うと思います。
 画面中央の山高帽を被った男が、画家自身と思われます。その左側の新郎風衣装の男が父親で、右側の赤い衣装の新婦が母親です。胸に抱いた小さな幼児・人形は、画家の幼い頃の姿です。自分が画壇に受け入れてもらえない引き篭もり画家で、その原因となった両親の結婚は陰謀だったと描いているのです。周りの人々は両親の親戚・友人・近所の人々です。自虐絵画です。
陰謀について(ジェームズ・アンソール、1890年作)
1889年のキリストのブリュッセル入城(ジェームズ・アンソール、1888年作)