2017年6月アントワープ王立美術館(アントワープ/ベルギー)に行きました。今回は、ハンス・メムリンク作「音楽を奏でる天使とキリスト」を紹介します。
 ハンス・メムリンク(1435年頃~1494年)は初期フランドル派の画家で、ヤン・ファン・エイクやファン・デル・ウェイデンに続いて活躍しました。ハンス・メムリンクはドイツ フランクフルト近郊のゼーリゲンシュタットに生まれました。ブリュッセルのロヒール・ファン・デル・ウェイデンの工房で修業しました。ファン・デル・ウェイデンが1464年に亡くなったのを機にブルッヘ(ブルージュ)に移り、1465年にブルッヘ市民権を得たようです。その後ブルッヘで活躍して、多くの作品を制作しました。現存する作品の大部分が、宗教画です。
 「音楽を奏でる天使とキリスト」はスペインの小さな村ナヘラのサンタ・マリア・ラ・ レアル修道院のオルガンの装飾を目的として、1487年にブルッヘ滞在領事ペドロとアントニオ・デ・ナヘラにより委嘱されたと伝わります。絵の中にスペインのカスティーリャ・イ・レオンの紋章が描かれていて、この伝承は正しそうです。165cmx672cmという巨大な祭壇画です。この下に主パネル「聖母被昇天」のある多翼祭壇画だったと伝わるようですが、チョット疑わしいと思います。
 下に「聖母被昇天」があるとすると、「
音楽を奏でる天使とキリスト」の中央パネルの幅で縦が400~500cmとなります。合計で600~700cmとなります。巨大な祭壇画となります。多翼祭壇画の場合は、画家と弟子が修道院に住み込みで描くことになりますが、そのような記録はなさそうです。多翼祭壇画は畳める構造ですが、「音楽を奏でる天使とキリスト」は中央パネルが小さくて畳めません。これは一枚の絵で、スペインに運ぶ為分割して制作したと思われます。
 下に「聖母被昇天」があると、天上のキリストの下に黒い雲があって、聖母が天上に昇れません。色々な観点から多翼祭壇画ではなく、一枚の祭壇画と思います。
 サンタ・マリア・ラ・ レアル修道院の聖歌隊部屋がほぼ同時期に建造されたようです。写真を添付しましたが、奥にパイプオルガンが見えます。上の手すり奥に細長い壁があり、ここに飾れるような飾れないような・・・。ただ上の(聖母と聖人が描かれた)フレスコ画の下に天上とキリストでは、ミスマッチです。反対の壁に飾ろうとしたのでしょうか?どちらにしろ、天上のキリストは聖歌隊を見ているようです。「聖母被昇天」はこの下になかったと思います。
音楽を奏でる天使とキリスト
(ハンス・メムリンク、1483~94年作)
イメージ 8
同上の中央パネル
サンタ・マリア・ラ・ レアル修道院の聖歌隊部屋(1493~95年建造)