2017年6月アントワープ王立美術館(アントワープ/ベルギー)に行きました。今回は、アントネロ・ダ・メッシーナ作「キリストの磔刑」を紹介します。
 アントネロ・ダ・メッシーナ(1430~1479年)はシチリアのメッシーナで大理石職人の息子に生まれました。ナポリで修業して、その際フランドルの画風を習得したようです。メッシーナで工房を構え仕事をしました。晩年1475年から1年ほど、ヴェネツィアで仕事をしました。
 「キリストの磔刑」は磔刑を描いた作品の間で、何か特別なものを感じます。非常に静かな画面で整っていますが、堅苦しさを感じません。非常に不思議に思い、アントネロ・ダ・メッシーナの作品を俯瞰してみました。そうすると大きな特徴があり、一つは肖像画はほぼすべて四分の三正面(左右両方あり)で、構成は左右対称の一部乱しです。左右対称の対称線を画面中央から少しずらしたり、一部アンバランスにしたりです。
 キリストの姿は左右対称で、首を少しだけ傾けています。その傾きを補正するため、右足を上にしてくぎ打たれています。これでキリストが向かって左に傾いて行ってしまいそうなのを止めています。左右の罪人は左右対称の配置ですが、真横から四分の三前後ろにずらして、バランスをとっています。左右の木も左右対称の様で、微妙にずらしています。足元の聖母マリアと福音記者聖ヨハネの配置も左右対称ながら、向いている方向をずらしています。奥の湖・湾も左右対称から、微妙にずらしています。全体を纏めて見ると左右対称で安定・安心な構図ですが、所々乱れているので窮屈さを感じさせません。この時代のフランドル絵画の技法をうまく取り入れています。同時代の有名画家よりも、よりフランドル風な画家です。フランドル地方を旅行したという説もあるようですが、地元のメッシーナとナポリに行ったという記録しか見つからないようです。
キリストの磔刑(アントネロ・ダ・メッシーナ、1475年作)