世界美術館巡り旅

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2025年09月

 2017年6月にへント美術館(へント/ベルギー)を訪問しました。今回は、ウィリアム・ホガース作「若い女性の肖像」を紹介します。
 ウィリアム・ホガース(1697~1764年)はロココ期のイギリス人画家です。風刺画を多く残し、「風刺画の父」と呼ばれたようです。当時の風俗や世相をよく理解していないので、実際の絵を見ても風刺画なのか風俗画なのか分からない絵が多いと感じます。
 ウィリアム・ホガースはロンドンで貧しい教師の息子に生まれました。銀細工工房に弟子入りしたり版画家をやったりの下積みをした後、風刺連作で徐々に知られるようになりました。後半生は肖像画の注文が多かったようです。
 「若い女性の肖像」はウィリアム・ホガースの作品の間でも、特別に気品のある高貴な美人に描かれています。まだ若く、お見合い写真のような肖像画なんでしょうか?興味を覚えて、ウィリアム・ホガースが描いた女性肖像を調べました。いくつかを紹介します。全体的にどの女性も明るく、感情をストレートに出しています。その間で気になったのが、「グラハム家の子供たち」です。ロイヤル・チェルシー病院の薬剤師ダニエル・グラハムの4人の子供たちを描いています。香油の調合で人気があり、貴族地区に店も構えていたようです。「グラハム家の子供たち」の一番年長の娘が、数年後に「若い女性の肖像」の容貌になったような気がします。読者の皆様は、どう感じますでしょうか?
若い女性の肖像(ウィリアム・ホガース作)
エビ売りの少女
(ウィリアム・ホガース、1740年作、ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)

当世風の結婚第二場 部分
(ウィリアム・ホガース、1743年作、ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)

自画像(ウィリアム・ホガース、1745年像)

グラハム家の子供たち
(ウィリアム・ホガース、1742年作、ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)
『グラハム家の子供たち』( The Graham Children ) 1742年 ウィリアム・ホガース ナショナル・ギャラリー蔵
ギャリック夫妻
(ウィリアム・ホガース、1757~64年作、ロイヤル・コレクション)
ギャリック夫妻( David Garrick with his wife Eva-Maria Veigel, "La Violette" or "Violetti" ) 1757年-1764年 ウィリアム・ホガース ロイヤル・コレクション蔵

 2015年4月にテッセン・ボルネミッサ美術館(マドリード)を訪問しました。大作は少なかったですが、著名な画家の傑作が目白押しでした。鉄鋼財閥のテッセン家とハンガリー貴族のボルネミッサ男爵家の血を引くハインリッヒ・テッセン・ボルネミッサ男爵の個人コレクションが起源の美術館だそうです。作品の質が高く、眼力の高い人が収集したようです。マドリード中央駅やプラド美術館から徒歩15分程で行けます。
テッセン・ボルネミッサ美術館の全景(Wikipediaから)
1920px-Museo_Thyssen-Bornemisza_(Madrid)_07 wiki
テッセン・ボルネミッサ美術館建物横の出入り門
DSCN1940
テッセン・ボルネミッサ美術館入口門で記念撮影
DSCN1942
 次の作品が一番有名な所蔵作品です。これ以外にも多数の名品・傑作を所蔵しています。順番に紹介します。
ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像
(ドメニコ・ギルランダイオ、1489~90年作)
ジョヴァンナ・トルナブオーニ  ドメニコ・ギルランダイオ
日本ではあまり知られていない絵と画家だが、ルネッサンス時代ヴェネツィア派の巨匠の絵です。
太った男性の肖像(ロベルト・カンピン、1425年頃作)

受胎告知(ヤン・ファン・アイク、1434~36年作)
受胎告知 ヤン・ファン・エイク
初期フランドル派の巨匠で、祭壇画が多い画家です。このような作品は初めてです。ある種の「だまし絵」だと思います。
キリストの降誕(タッデオ・ガッディ、1325年頃)
nativity タッデオ・ガッディ
六天使と聖母(ローレンツィオ・モナコ、15世紀初頭作)
六天使と聖母子 ローレンツオ・モナコ
聖母子(ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、1433年作)
聖母子 ウェイデン
枯れ木の聖母(ペトルス・クリストウス、1450年頃作)
クリストウス枯れ木の聖母 
聖会話(ジョヴァンニ・ベッリーニ、1505~10年作)

博士たちの間のキリスト(アルブレヒト・デューラー、1506年作)
アルブレヒト・デューラー学者たちの間のキリスト 
聖母子(ティッツアーノ・ヴェスプッチ作)
聖母子 ティッツアーノ
少年の肖像(ラファエロ・サンティ作)
少年の肖像 ラファエロ
風景の騎士(ヴィットロ・カルパッチオ、1510年作)
風景の騎士 ヴィットロ・カルパッチオ
ブドウを持った聖母(ルーカス・クラナッハ父、1509~10年作)

ヘンリー8世の肖像(ハンス・ホルバイン子、1537年作)
ヘンリー8世の肖像 ハンス・ホルバイン子
受胎告知(エル・グレコ、1575~76年作)

アレキサンドリアの聖カトリーヌ
(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ、1598年作)
アレキサンドリアの聖カテリナ カラヴァッジョ
カラヴァッジョの傑作ですが、他の作品も力負けしていません。
聖母子とパルレモの聖ロザリナ
(バルトロメ・エスティバン・ムリーリョ、1670年作)
ムリーリョ Virgin and Child with St Rosalina of Palermo
花を摘む幼いキリスト(カルロ・ドルチ、17世紀中頃作)
hanawomotsu iesu カルロ・ドルチ
サン・ヴィオから眺めた大運河(カナレット、18世紀前半作)
Grand Canal, Looking East from the Campo San Vio カナレット
自画像(レンブラント・ファン・レイン、17世紀中頃過ぎ作)
自画像 レンブラント
ヴィーナスと鏡を持つキューピッド(ピーテル・パウル・ルーベンス作)
ヴィーナスと鏡を持つキューピッド ルーベンス
アムステルダム市庁舎の評議会室(ピーテル・デ・ホーホ、1663~65年)

農民の肖像(ポール・セザンヌ作)
Paul_Cézanne_-_Portrait_d'un_paysan農民
オーヴェルの眺望(フィンセント・ファン・ゴッホ、1890年作)
View of Vessenots, Auversオーヴェルの眺め ゴッホ
緑の衣装のダンサーたち(エドガー・ドガ、1880年作)
緑の衣装のダンサー ドガ
灰色の家(マルク・シャガール作)
灰色の家 シャガール
ピンクのジャンパー(マックス・ベックマン、1934年作)
ピンクのジャンバー ベックマン
鏡を持つ道化(パブロ・ピカソ、1923年作)
鏡を持つ道化 ピカソ
 画家の図鑑を作ろうとしたら不可欠な傑作が一杯所蔵されていました。マドリッドの美術館はすごいですね。

 2017年6月にへント美術館(へント/ベルギー)を訪問しました。今回は、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー作「ドレスデンの家」を紹介します。
 エルンスト・ルートヴィッヒ・キルヒナー(1880~1938年)はドイツ表現主義に分類される画家です。非常に特徴的な作品を多く残しています。
 エルンスト・ルートヴィッヒ・キルヒナーは1880年バイエルン州アシャツフェンブルクで生まれまし。1901年ドレスデン工科大学で建築学を学んだ後、ミュンヘンで美術を学びました。1905年ドレスデンで画家グループの「ブリュッケ(橋の意味)」を結成しました。統一した画風がある訳ではなく、アカデミックな芸術に反抗して結成したようです。1911年にベルリンに移り、1912年カンディンスキーやマルクの画家グループ「青騎士」の展示会に出品しました。
 第一次世界大戦の1915年に徴集され、ザクセン州ハレの砲兵隊に配属されました。間もなく神経衰弱で除隊して、フランクフルト近くのサナトリウムで療養しました。1917年からスイスのダボスで画作に励みました。その後肺結核に至りました。
 1933年ナチスドイツにより「退廃芸術」とされ、「退廃芸術展」に32点も展示されました。1938年にピストル自殺して亡くなりました。 フォーヴィズムに(アフリカ、オセアニアの)原始芸術を取り入れた画風です。
 個人的にはキルヒナーの人物像には、写楽のそれを連想させます。輪郭の強弱と黒の使い方です。人物描写への強い輪郭の傾向は1900年(20歳)を過ぎてすぐ現れます。「ドレスデンの家」を描いた1910年頃の作品「マルツェラ」、「マルセラ」の女性像にも感じられます。このキルヒナー風輪郭を風景画にどう取り入れるか、画家自身で悩んでいたようです。1910年以降の風俗画には人物像を描きこんで、キルヒナーらしさを出しています。
 「ドレスデンの家」で塀の上・屋根の縁などに黒い線(輪郭)が入っていますが、余り感動やその良さを感じさせません。まだ悩んでいたのでしょうか?キルヒナーらしさは感じません。同じ1910年作品の間では、「マルセラ」の女性の物憂げな顔とクネッタ姿勢、黒い縞模様、猫のフォルムなど興味をひきます。一番出来が良いです。「ドレスデンの家」では、ピンクの木・青い屋根・黄色の塀(ベージュ)の取り合わせが良いです。実際とは違う色(ピンク、紫、緑)がアクセントになっています。ゴーギャンが、「少し青っぽく感じたら真っ青に、少し赤っぽく感じたら真っ赤に描け。」と言ったそうです。それをさらに押し進めたのか。
ドレスデンの家(エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、1910年作)
イメージ 25
街(エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、1913年作、
ニューヨーク近代美術館蔵)

ブリュッケの画家たちの肖像
(エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、1926~27年作、
ヴァルラフ=リヒャルツ美術館蔵)
マルツェラ(エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、1910年作、
ストックホルム近代美術館蔵)

マルセラ(エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、1910年作、
ブリュッケ美術館蔵)
Brücke-Museum (Berlijn) - 2018 Alles wat u moet weten voordat je gaat ...




 2015年4月 バルセロナ・ピカソ美術館(バルセロナ)を訪問しました。大作の「ベラスケス作ラス・メーニナスのパロディ」が展示されているので有名です。館内は撮影禁止で、写真が撮れませんでした。公式ホームページから、いくつかの作品を紹介します。
 ラス・メーニアスのパロディには感動を受けませんでした。それよりも、ピカソが若い頃に画風がまだ決まらず悩んでいたんだろうと思わせる小品に心を引かれました。
               ピカソ美術館の門で記念撮影
DSCN2090
ピカソ美術館中庭と玄関(Wikipediaから)
800px-Museu_Picasso_Barcelona wiki
画家の母(パブロ・ピカソ、1896年作)
パブロピカソ。ラ・マーレ・ド・ラティルスタ
科学と慈愛(パブロ・ピカソ、1897年作)
picasso_ciencia
初聖体拝受              ベレー帽の男
(パブロ・ピカソ、1896年作)      (パブロ・ピカソ、1895年作)

フェアーグラウンド・ストール(パブロ・ピカソ、1900年作)
フェアーグラウンド・ストール
バルセロナの屋根(パブロ・ピカソ、1903年作)
バルセロナの屋根
進呈(パブロ・ピカソ、1907年作)
提供物
アルルカン(パブロ・ピカソ、1917年作)
アルルカン
スペイン・ドレスを着た女性(パブロ・ピカソ、1917年作)
スペインのドレスを着た女性、1917年 - パブロ・ピカソ
ラス・メニーナスのパロディー(パブロ・ピカソ、1957年作)
ラス・メーニナス
幼いマルガリータ(パブロ・ピカソ、1957年作)
ラス・メーニナス 幼いマルガリータ
小鳩(パブロ・ピカソ、1957年作)
鳩たち

ラス・メニ―ナスの習作(パブロ・ピカソ、1957年作)
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バス停の近くのお店にピカソの作品らしき看板が掲げられていました。
カタルーニャ建築家協会の壁画(パブロ・ピカソ作)
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カタルーニャ建築家協会の壁画(パブロ・ピカソ作)
DSCN2086

 2017年6月にへント美術館(へント/ベルギー)を訪問しました。今回は、アルフレッド・ステーブンス作「マグダラのマリア」を紹介します。
 
アルフレッド・ステーブンス(1823~1906)はブリュッセルで、ナポレオン戦争に勝利したオランダ軍事上がりの美術コレクターの息子に生まれました。母親方祖父母はカフェを経営し、政治家・作家・芸術家が多く出入りしました。孫に当たるアルフレッド兄弟はよく出入りして、交流しました。
 1837年に父が亡くなり、中学を中退してアカデミー・ロワイヤル・デ・ボザールで学びました。1843年にパリに出て、エコール・デ・ボザールで学びました。アカデミー派のような画風で、美人画を多く描きました。サロンや万博などに出品して、メダルを授与されました。やがて1881年にレオポルド勲章を授与されました。
 「マグダラのマリア」は女優サラ・ベルンハルトをモデルに描きました。衣装やテーマを替えて何枚か描いた中の一枚です。「マグダラのマリアに扮したサラ・ベルンハルト」が本来の画題になるべきだったのかもしれません。髑髏を抱え髪を伸ばしていますが、とても改悛した雰囲気ではありません。とても妖艶なえです。宗教性が抑えられていることで、評判・噂になったようです。他の作品もいくつか紹介します。
マグダラのマリア(アルフレッド・ステーブンス、1887年作)

ラ・ジャポネーズ
(アルフレッド・ステーブンス、1872年作、リエージュ近代美術館蔵)
パリのスフィンクス
(アルフレッド・ステーブンス、1875~77年作、アントワープ王立美術館蔵)

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