世界美術館巡り旅

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2022年11月

 2013年7月にワシントン・ナショナルギャラリー(ワシントン)を訪問しました。非常に暑い日でした。開館時間前に並んで、一番に入館しました。傑作・名品が多数所蔵・展示されていますが、何故かラ・トゥール作の「悔い改めるマグダラのマリア」の印象と記憶が強かった。何故そう感じたのか、調べてみました。
悔い改めるマグダラのマリア(ラ・トゥール作)
 ラ・トゥールの作品を並べてみると、どうもこの作品に描かれている女性(マグダラのマリア)が最も美人(美女)に描かれているからのようです。ラ・トゥールは風俗画の登場女性を、特徴を強調して単純化・平面化した描いています。宗教画は暗闇に蝋燭の明かりで描いています。これも明暗を強調して描いています。「悔い改めるマグダラのマリア」も複数の作品が残っていますが、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵作品が一番美人に描かれています。
悔い改めるマグダラのマリア(ラ・トゥール作、メトロポリタン美術館蔵)
悔い改めるマグダラのマリア(ラ・トゥール作、ルーヴル美術館蔵)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールによる『マグダラのマリアと蝋燭の光(Magdalen with the Smoking Flame)』
風俗画で描かれている女性も紹介します。
いかさま師(ダイヤの札版)(ラ・トゥール作、ルーヴル美術館蔵) 
 どうも「美人画」と言うものは、描き過ぎてはいけないようです。余り特徴のない、陰影の薄い絵の方が、鑑賞する人が理想(自分好み)の映像を連想して、美人に見えるのではないかと思います。特徴や陰影を強く描くと余り美人に見えず、人相が悪くなります。自分の眼で確かめてみてください。


 2013年7月にワシントン・ナショナルギャラリー(ワシントン)を訪問しました。非常に暑い日でした。開館時間前に並んで、一番に入館しました。
 ワシントン・ナショナルギャラリーの所蔵品の間では、「東方三博士の礼拝(フィリッポ・リッピ作)」、「ジネヴラ・デ・ベンチの肖像(レオナルド・ダ・ヴィンチ)」、「アルバの聖母(ラファエロ作)」、「鏡とヴィーナス(ティッツアーノ作)」等が有名ですが、「天秤を持つ女(フェルメール作)」を紹介しようと思います。
天秤を持つ女(フェルメール作)

 この絵はフェルメール最大のパトロンのコレクションだったようで、死後娘婿が引き継ぎました。娘婿も死んだ後、オークションに掛けられたとの記録があります。アムステルダム国立美術館所蔵の「牛乳を注ぐ女」が177ギルダーで、この絵が155ギルダーで落札されました。当時も評価が高かったと見えます。パトロンのコレクションだったという事は、依頼を受けて描かれたものではなさそうです。フェルメール自身の発想で描かれたと思われます。寓意を含んだ絵と思われます。どんな寓意だったかを推定しています。
  ヒントを挙げていきたいと思います。
① この女性は金持ちの若い妻で、お腹の辺りを見ると妊娠中のようです。
② 背景の絵は「最後の審判」で陰に隠れている部分に、天秤を持った聖ミカエルが
  描かれている筈です。人の魂の軽重を計って、天国・地獄行きを決めます。
③ 女の持っている天秤の上には何も載っていません。若い女性は、「天国に行けるか
  地獄に落ちるか?」とか「正義をとるか、悪をとるか」を量っている。
④ この絵を買ってくれそうな客は、オランダの裕福な商人か貴族と期待した。

  どうもこの絵の寓意は、「若くて美しい妻を娶ると(妻の浮気や本当に自分の子供か)と心配事が増える。年老いた妻と離婚して若い妻を迎えようなどと考えるな。」でしょうか。「裕福な商人はこの絵を飾って、邪な考えを打ち消す。」事を期待したが、そのような客は見つからなかったようです。
  フェルメールの時代のオランダでは顧客が画家のアトリエを訪れ、気に入った作品の値段交渉をして購入を決めたようです。比較的地味な絵の上自重の寓意を含んでおり、(恐らく)高額だったので買い手が出なかったのでしょう。

 2014年7月にシカゴ美術研究所(シカゴ)を訪問しました。 シカゴ美術研究所と言えば、「グランド・ジャット島の日曜午後(スーラ作)」や「パリの通り、雨(カイユボット作)」、「ゴッホの寝室(ゴッホ作)」、「ジャック・リプシィツとその夫人(モディリアーニ作)」などの所蔵品が有名です。それ程有名ではありませんが、「ムーラン・ジュールにて(ロートレック作)」は傑作だと思います。
ムーラン・ジュールにて(ロートレック作)
 この傑作は独創的ではありますが、美しい絵とは言えません。特に右端のダンサーの顔は照明が当たって、決して「美しい」とは言い難い。どちらかと言えば、グロテスクです。白っぽい顔なのは、手前ダンサー3人と奥のダンサー2人と奥の背の低い横顔の男(ロートレック本人と言われている)のそれです。どうも「ダンサーたちとロートレックは仲間だ。」と言いたいようです。
 右端の女性が入らないように画面右端を切ると普通の構図の絵です。この絵を見てる人は、左下の低い間仕切りの外側に居ることになり、右端の女性と視線が合ってしまい、「見たなー。」という表情をされてしまいました。
  ロートレックは貴族(伯爵)の長男として生まれたが、遺伝的な原因で成人前に両太ももを骨折して上半身は大人、足は短いという体型になってしまいました。ムーラン・ルージュに入りびたり、ダンサー(娼婦)達と遊び暮らしたようです。自嘲気味な群衆自画像なんでしょうか。高貴な生まれでありながら身体的なコンプレックスを持った、屈折した人生だったようです。
 ロートレックはポスターも描いて、同時代のムハ(ミュシャ)と19世紀後半のパリで人気を二分したようです。
ディヴァン・ジャポネのポスター(ロートレック作)

 ムハのアカデミー派的な画風に対して、アバンギャルトな画風でポスターを描きました。絵画もアカデミー派からは程遠い画風でした。

 2014年7月にシカゴ美術研究所(シカゴ)を訪問しました。シカゴ美術研究所と言えば、「グランド・ジャット島の日曜午後(スーラ作)」を所蔵・展示している事で有名です。スーラの最も有名な最高傑作で、点描の金字塔のように言われます。個人的な趣味からは、「パリの通り、雨(カイユボット作)」が一番印象的です。カイユボットは遠近法に拘ったようで、代表作は殆どが遠近法の使い方に工夫が見られます。この「パリの通り、雨」は二点消失遠近法を駆使した、「二点消失遠近法の金字塔」と言えます。
パリの通り、雨(カイユボット作)

遠景の視点は低くして遠近感を強くしています。人物を描いたのは、人の立った高さです。手前の石畳は高い視点から描いています。これを組み合わせた上、濡れた石の質感で独自の世界を描いています。
カイユボットが遠近法に拘っていたことを示す代表作を紹介します。
鉋掛け(カイユボット作、オルセー美術館蔵)
ヨーロッパ橋(カイユボット作、プティ・パレ ジュネーヴ蔵)
ボート漕ぎ(カイユボット作、ワシントン・ナショナルギャラリー蔵)
 一点消失遠近法の作品が多く、ハッキリと二点消失遠近法が感じられるのは「パリの通り、雨」だけだと思います。名品・傑作です。

 2014年7月にバーンズ・コレクション(フィラデルフィア)を訪問しました。インタネットで予約して行きました。館内撮影禁止だったと記憶します。こんなところにこんな作品があったのかと驚きの連続でした。著名画家の大作が多かった。セザンヌとマティスの作品が多かったと記憶します。
大水浴(セザンヌ作)
イメージ 3
 セザンヌの水浴の絵はあちこちで見ましたが、ここのが一番大きいように思えました。同じテーマの絵でも、大きいほうが(没入感が出て)良いです。
 帰国後調べると、一番大きいのはフィラデルフィア美術館所蔵の大水浴図で208x249センチメートル、二番目がこのバーンズ財団所蔵の132.5x219センチメートル、三番目がロンドン・ナショナルギャラリー所蔵の132.5x219センチメートルのようです。
大水浴図(セザンヌ作、フィラデルフィア美術館蔵)
大水浴図
バーンズ財団で見た大水浴図の印象のせいか、展示(天井高さ、平野の大きさ)のせいか、フィラデルフィア美術館所蔵作品が一番大きいとは気づきませんでした。
大水浴図(セザンヌ作、ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)
 大水浴
私が見たセザンヌ作大水浴図の間で、で一番小さかったのはグラネ美術館(フランス)所蔵の作品でした。
大水浴図(セザンヌ作、グラネ美術館蔵)
大水浴  cezanne[1] 
 ある程度の大作を期待していましたが、実物は非常に小さくて大笑いでした。
  大水浴(セザンヌ作)の前で
イメージ 15
 セザンヌは生涯60作品以上の水浴図を描いたようです。探せばもっと小さい作品があるかも知れません。

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