世界美術館巡り旅

世界の美術館・旅行・画家・絵画の情報共有サイト

2022年10月

 プラド美術館(マドリード)は、著名画家の最高傑作(準最高傑作)約90作品の内6作品を展示しています。
  「羊飼いの礼拝(エル・グレコ)」、「カルロス4世の家族(ゴヤ)」、
  「アダムとエヴァ(デューラー)」、「快楽の園(ヒエロニムス・ボス)」、
  「ラス・メーニナス(ベラスケス)」、「無原罪の御宿り(ムリーリョ)」
これ以外にも傑作・名品が沢山ありました。プラド美術館鑑賞を甘く見ていました。これほどの傑作・大作を多数展示しているとは、行ってみて初めて分かりました。
プラド美術館正面(公式HPから)
イメージ 1
 数々の名品・傑作を鑑賞しましたがロヒール・ファン・デル・ウェイデン作の「十字架降架」に目を奪われました。ウェイデンは初期フランドルの三大巨匠(カンピン、ヤン・ファン・エイク、ウェイデン)の一人です。15世紀前半から中期に活躍して、15世紀後半にはその名声がヤン・ファン・エイクのそれを凌いでいたようです。
十字架降架(ウェイデン作)
イメージ 5
 もう少し拡大した別の写真も紹介します。             
            
 15世紀の絵画としては、その奥行き感にはびっくりです。最前列・二列目・三列目と奥の壁まで、キチンと描き分けられています。通常の一点消失遠近法とか空気遠近法を使っていません。私の持論ですが、「精彩に、正しいデッサン(印影と形状)、正しい色調で描かれていると、それだけでも遠近感・奥行き感を感じてしまう。」と思っています。ウエイデンのデッサン力がすさまじく高いという事です。
 15世紀の古文書でウエイデンの真作と確認できる作品はないそうです。その間でこの作品は16世紀の古文書で確認できる、最も昔まで遡れる作品のようです。
  絵の古さと画力の高さから、ウエイデンの真作だと私は感じます。

 2015年4月にプラド美術館(マドリード)を訪問しました。イタリア ルネッサンスとスペインの画家の大作が多数展示されて、壮観でした。ルネッサンスとスペイン画家の大作の質は、ルーヴル美術館を凌駕すると思われました。メキシコで大量の銀が採掘された時代に、お金にモノを言わせて収集したとの印象です。   
 著名画家の最高傑作(準最高傑作)約90作品の内下記6作品を展示しています。
  「羊飼いの礼拝(エル・グレコ)」、「カルロス4世の家族(ゴヤ)」、「
  アダムとエヴァ(デューラー)」、「快楽の園(ヒエロニムス・ボス)」、
  「ラス・メーニナス(ベラスケス)」、「無原罪の御宿り(ムリーリョ)」
これ以外にも傑作・名品が沢山ありました。
プラド美術館出入口側からの記念写真
イメージ 2
 傑作が多数展示されていましたが、ヴェラスケス作の「アラクネの寓話」が気に掛かりました。「ラスメーニアス」程有名ではありませんが、ヴェラスケス晩年の傑作です。
アラクネの寓話(ディエゴ・ヴェラスケス作)
イメージ 19
 アラクネの寓話はギリシャの神話で、「貧しい優れた機織り女性のアラクネが知恵と芸術の女神パラス・アテナと織物を競い、織物のテーマが神々を冒とくしたとアテナに蜘蛛にされてしまった。」というお話です。
 奥の部屋と手前の部屋に5名ずつの女性が居ます。奥の部屋でタペストリーの前でこちらを向いている女性と手前の部屋でうつむいている女性が、アラクネのようです。手前の部屋の黒衣の老婆と奥の部屋の片手を挙げているのが、パラス・アテナです。奥の部屋に掛かっているタペストリーの絵柄がエウロペの略奪(神の悪行)です。
 この絵を制作したのは1657年頃で、フェルぺ4世からベラスケスは製作を命じられました。1657年はスペイン・フランス戦争の末期で、1659年に終結します。  
 これらを考慮すると、アラクネがフランスの象徴、アテナがスペインです。要するに「フランス軍がスペインに戦争を仕掛けてきているが、いまにスペイン軍が懲らしめてやる。ハプスブルグ家(寓話では神)の力を見せてやる。」というフェルぺ4世の意志を表していると思われます。戦争の結果は反対で、フランスにスペインがカタルーニャ北部を割譲するという結果になりました。この理解は世の中の定説とは異なりますが、この理解の方がこの絵をヴェラスケスに描かせた事情を上手く説明できます。  
 絵の素晴らしさと歴史の皮肉を考えると、この絵の美しさが一段と感じられます。

 2015年4月にテッセン・ボルネミッサ美術館(マドリード)を訪問しました。大作は少なかったですが、著名な画家の傑作が目白押しでした。鉄鋼財閥のテッセン家とハンガリー貴族のボルネミッサ男爵家の血を引くハインリッヒ・テッセン・ボルネミッサ男爵の個人コレクションが起源の美術館だそうです。作品の質が高く、眼力の高い人が収集したようです。マドリード中央駅やプラド美術館から徒歩15分程で行けます。
テッセン・ボルネミッサ美術館入口門で記念撮影
DSCN1942
 次の作品が一番有名な所蔵作品です。これ以外にも多数の名品・傑作を所蔵しています。
      ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像(ドメニコ・ギルランダイオ作)
ジョヴァンナ・トルナブオーニ  ドメニコ・ギルランダイオ
 日本ではあまり知られていない画家だが、ルネッサンス時代ヴェネツィア派の巨匠です。ミケランジェロが最初に師事したのが、このドメニコ・ギルランダイオです。
 フィレンツエの幾つかの修道院・教会に最後の晩餐の壁画を描いています。フィレンツエで大人気だったと思われます。
フィレンツエのサンマルコ教会 最後の晩餐(ドメニコ・ギルランダイオ作)
             

 2015年4月にカタルーニャ美術館(バルセロナ)を訪問しました。バルセロナでピカソ美術館とミロ美術館を訪問したついでと言う感覚で行きましたが、両者よりズット立派で充実した美術館でした。美術館前の池や噴水も立派でした。
カタルーニャ美術館前で記念撮影
DSCN2062

絵画・彫刻・工芸品の立派な総合美術館でした。絵画だけでも、相当の見ごたえがありました。ルーベンス/ティツアーノ/リベラ/スルバラン・・・・・とルネッサンス・バロックの作品が多数展示されていました。多数の祭壇画も展示されていました。その間で次の絵が目に留まりました。凄みを感じる静物画の上、作者がスルバランと描かれていました。スルバランは人物画・宗教画を多く描いたスペインの画家です。日本で良く知られているのは次の2枚くらいでしょうか?
幼い聖母マリア(エルミタージュ美術館蔵)
神の子羊(プラド美術館蔵)
 スルバランの静物画の印象が無かったので印象が深く記憶に残りました。帰国後調べました。カタルーニャ美術館に展示されていたのは次の写真です。スルバランの静物画は4作品が残っているようで、この作品はプラド美術館所蔵品のようです。同じスペインの国立美術館なので、時々所蔵品の貸し借りがあるようです。この時はカタルーニャ美術館にありました。通常はプラド美術館に展示されていると思われます。
水差しの静物(フランシスコ・デ・スルバラン作)


 スルバランの静物画は、ロンドン・ナショナルギャラリーに「銀盆上の水のカップと薔薇」、ノートン・サイモン美術館に「レモン・オレンジとカップと薔薇」と「籠のパン」(詳細不明)が残っているようです。「レモン・オレンジとカップと薔薇」はその後ノートン・サイモン美術館(ロサンゼルス郊外)訪問時に鑑賞出来ました。ロンドン・ナショナルギャラリーの作品は、見たかどうか記憶にありません。
レモン・オレンジとカップと薔薇(フランシスコ・デ・スルバラン作)

 2019年7月にブラチスラヴァ市立ギャラリーを訪問しました。ブラチスラヴァ市立ギャラリーはパッフィー宮殿とミルバッハ宮殿に分かれて展示されていました。地元画家の作品が多いと感じました。二つの宮殿で撮影した写真と公式HPの写真を紹介します。
 フビェズド・スラヴォヴォ広場の一本北側の道に面して、パッフィー宮殿がありました。

パッフィー宮殿入り口前で記念撮影
DSCN0970
 多数の展示作品の間で、次の絵が目に留まりました。絵からのインパクトや額の立派さ、展示の配置から、気に掛かったのだと思います。

人形を持つ少女の肖像(フェンディー・ペーター作)
人形を持つ少女の肖像 ピーター・フェンディー作
 画家のフェンディー・ペーターはオーストリア人で、幼い頃に事故により脊椎損傷して下半身が不自由となったようです。火災に優れ13歳でウイーン美術アカデミーに入学を許され、成人して貴族の依頼を受けて肖像画を描いたりしていたようです。
 パッフィー宮殿鑑賞が終わり、次はミルバッハ宮殿に向かいました。市庁舎隣のフラヴォネー広場の端にミルバッハ宮殿がありました。

ミルバッハ宮殿入り口で記念撮影
DSCN1010

ミルバッハ宮殿最初の展示室
DSCN1001
 この宮殿では次の絵が目につきました。

ジョージ・ラファエロの肖像(パウル・トロガー作)
ジョージ・ラファエロの肖像 ポール・トロガー作

ジョージ・ラファエロの肖像の前で
DSCN1002kai
 この画家もオーストリア人で画才が見込まれ、司教の支援でイタリア留学をしていたようです。宗教画(修道院の天井画、壁画等)が残っているようです。
アルテンブルグ修道院の天井画(パウル・トロガー作


メルク修道院の天井画(パウル・トロガー作)

大作を描く画力があったので、肖像画も迫力が出たのでしょうか?

↑このページのトップヘ