世界美術館巡り旅

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カテゴリ:世界の美術館 > ハンガリーの美術館

 2019年7月にハンガリー国立美術館へ行きました。ハンガリー国立美術館は1957年創立で、ブダ城のなかにありました。今回はマスターM.S.作「マリアのエリザベート訪問」を紹介します。
 マスターM.S.は16世紀初頭にスロヴァキア、ハンガリーで活躍した画家で、ゴシック後期とルネッサンス初期の画風です。実名は分かっていません。現存しているのは僅か7作品で、8枚から成る祭壇画だったようです。俯瞰すると聖母マリアの描写に力が入っていて、聖母マリア教会の祭壇画のように見えます。パネルサイズが一番大きいのが、リール美術館所蔵の「三賢人の礼拝」です。それが中央パネルか?1506~10年に描かれた作品のようです。
 階段吹き抜けホールに繋がっていて、最初に眼に着いたのがこのマスターM.S.の作品でした。実像が良く分からないし現存作品の少ない画家です。有名美術館でも余り所蔵していない、レアものです。
 マリアは受胎告知の際、エリザベートが(洗礼者ヨハネを)妊娠していると聞きました。それで訪問した場面です。左側の女性はおなかが大きそうです。こちらがエリザベートなんでしょうか?
マリアのエリザベート訪問(マスターM.S.作)
1506 マリアのエリザベート訪問 マスターMS
三賢人の礼拝(マスターM.S.、1506年頃作)
 「アート再現 | 東方三博士礼拝の図, 1506 バイ Master M S | WahooArt.com

 2019年7月にハンガリー国立美術館へ行きました。ハンガリー国立美術館は1957年創立で、ブダ城のなかにありました。ハンガリー人の古典絵画や19・20世紀にパリで活躍したハンガリー人画家の作品を所蔵・展示していました。今回はロッツ・カーロイ作「水浴する女」を紹介する。
 ロッツ・カーロイ(1833~1904年)はドイツ人の父とハンガリー人の母の間に生まれました。1837年に父が亡くなり、母子でペストに移住しました。私立美術学校で学び、やがてウィーンで歴史画家に師事後ハンガリーに戻り、壁画画家として活動しました。1882年からブダペストの美術学校で教授を務めました。ハンガリーの国民的画家の一人です。
 「水浴する女」はほぼ等身大に描かれた裸婦の絵です。若干粗いタッチで美しく描かれています。アングルの「泉」を連想させる、清々しい裸婦像です。
水浴する女(ロッツ・カーロイ作)
水浴する女 ロッツ・カーロイ

 2019年7月にブダペスト西洋美術館に行きました。ヨーロッパで所蔵・展示作品に期待が持てる美術館の南東限にあたる美術館です。事前調査では非常に小さな「エスタルハージの聖母(ラファエロ作)」が代表作のようです。今回は、ラファエロ・サンティ作「エスタルハージの聖母」を紹介します。
 ラファエロ・サンティ(1483~1520年)はウルビーノ公国の宮廷画家の息子に生まれました。11歳で孤児となり、伯父が後見人となりました。1500年頃にはペルジーノの工房の助手になっていました。 
 「エスタルハージの聖母」は20cm角程の非常に小さい絵で、色調が今一つで最後の上塗りがされていない。一方、聖母やキリストの容貌がラファエロ風です。超細密描写です、生半可な画家では贋作できない。半信半疑で帰国しました。
 その後、インターネットで調べてみました。① この絵は未完成という事で認知されている。それが制作過程見られ、価値が高い。②かなり古くから所有者の推移がトレース出来る。③ウフィツィ美術館に下絵と思われる素描が存在する。どうも真作のようです。        
エスタルハージの聖母(ラファエロ・サンティ、1508年作)
Raffael_029エスタルハージの聖母

ウフィツィ美術館所蔵のラファエロ素描

 2019年7月にブダペスト西洋美術館に行きました。事前調査では非常に小さな「エスタルハージの聖母(ラファエロ作)」が代表作のようで、余り期待せずに行きました。行ってみてびっくりで、傑作・名品が多く所蔵・展示されていました。
 日本では余り知られていませんが、ハンス・ボルデング・グリーン作「悲しみの聖母」が気に掛かって、帰国後調べてみました。ハンス・ボルデング・グリーン(Hans Baldung Grien)は、ドイツ・ルネッサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーの最有能な弟子だったようです。聖母の表情が、何故か感傷的・官能的です。教会は許容したのか、不思議な絵です。
ハンス・ボルデング・グリーンの自画像
Hans Baldung, Self-Portrait.jpg

悲しみの聖母(ハンス・ボルデング・グリーン作)
悲しみの聖母  Hans BALDUNG GRIEN
悲しみの聖母の前で
DSCN0674kai
日本では余り知られていない画家ですがハンガリーに近い事と代表作の一つのようで、当別待遇の展示でした。
イヴ(ハンス・ボルデング・グリーン作
Eve
  アルブレヒト・デューラーのイヴと比較すると、チョット色っぽく描かれていますネ。悲しみの聖母の顔と共通する感性があるようです。作品の数々を見比べると、顔の正面と(瞳から推定出来る)視線の方向をズラシテ描いています。何らかの考え(方針)があったと思われます。これが独特の雰囲気を作り出している要因の一つのようです。

 2019年7月にブダペスト西洋美術館に行きました。ヨーロッパで所蔵・展示作品に期待が持てる美術館の南東限にあたる美術館です。名品・傑作が多く展示されていましたが、ビックリしたのは次の2作品です。カルロ・クリヴェッリはアムステルダム国立博物館の「マグダラのマリア」やミラノのブレラ美術館の「聖母子像」が有名ですが、現存する作品は20枚前後です。兄弟のヴィットロ・クリヴェッリはもっと少なくて、10作品以下です。それが一つの展示室に展示されているのは驚くしかありません。恐らく世界で唯一だと思います。兄弟が夫々描いた聖母子像を比較・鑑賞してみてください。
               聖母子像(カルロ・クリヴェリ作)
茨の聖母 カルロ クリヴェッリ
聖母子像(ヴィットロ・クリヴェッリ作)
聖母 ヴィっとロ 
カルロ・クリヴェッリの作品の前で
DSCN0655kai

 カルロ・クリヴェッリの聖母表情は独特な雰囲気があります。ヴィットロ・クリヴェッリの聖母表情は標準的で素直な感じです。ヴィットロ・クリヴェッリは正統派、カルロ・クリヴェッリは独自の画風を追求したようです。クリヴェッリ兄弟の画風の違いを間近に比較・鑑賞できるのは此処だけです。ブダペスト西洋美術館訪問の際は、是非鑑賞してください。

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